いまさら小説 FF II




その日、天に向かい一筋の光の柱が昇った。轟音が轟き、大地が震えた。人々は恐れおののき、
この世の終わりを覚悟した。その光は、ほんの数週間前までパラメキアと呼ばれていた世界の果てから昇った。
天をも貫かんとするその光の柱は遠く、フィンでも見られたという。
人々はこの世の終わりと皇帝の魔力に恐れをなして家に隠り、聖職者は一心に神に祈った。
フィンの王女、ヒルダ。カシュオーンの王子、ゴードン。そしてミシディアの魔導師達は知っていた。



パラメキア皇帝の世界征服の野望は潰え、4人の若者の手により平和が約束された。
そのはずだった。伝令が走り、各地にパラメキア城陥落の知らせが伝えられ、人々は驚喜した。
勝利に酔い、訪れる平和に生きる気力を取り戻した時。突如パラメキア城が轟音と共に崩れ落ち
あのまがまがしき地獄の城、パンデモニウムが現れたのだ。竜巻での皇帝の死後、
なりを潜めていたモンスター達も再び活発に活動を開始し、
竜巻の傷跡を復興せんとする人々に容赦なく襲いかかった。
再び始まった戦いに、疲れ切った人々はあまりに無力だった。
人々は天を仰ぎ、救いを求めた。あの長いパラメキアとの戦争が終わったかと思えば、
地獄の城が出現。なぜ我々はこうも過酷な運命を背負わなければならないのか、と。

絶望が世界を覆い尽くす中で、最後まで戦い続ける不屈の4人がいた。
命を救われたヒルダに恩返しをしようと、殺された両親の敵を討つべく、
生き別れの兄を捜すべく、それぞれの思いを胸に反乱軍に志願した若者達である。

フィンに潜入しカシュオーンの第一王子、スコットの死を見届け、
ミスリル鉱山を帝国より奪取し、裏切り者、ボーゲン伯爵を蛙の刑に処し、
ヨーゼフと悲しい別れを告げ、カシュオーン城を王子の公認のもと荒らし、大戦艦を爆破、
同時に囚われの身だったヒルダ、シドを救い出し、フィン国王の死を見届け、
海賊を配下に加え、ディストで飛竜を助け、偽物だったヒルダ王女を救いに
パラメキアのお膝元の闘技場に赴きベヒーモスを蛙に処し、先に脱出するヒルダ、
ゴードン両名のために囮となり、単独でフィンに潜入、司令官を蛙にしたのち、
念願だったフィンの奪還を実現、海上でリバイアサンに飲み込まれ、
ミシディアの塔を踏破し、ミンウの命と引き替えに究極の(役に立たない)魔法、
アルテマを入手、竜巻に押し入って全ての元凶であるパラメキア皇帝を蛙にし、
はるばるパラメキアまで新皇帝となった友人にあいさつに出向いた強者達である。
彼らの活躍無くして帝国との戦争に勝利はない。

すっかり反乱軍の指導者としての風格が漂うようになったゴードンと
悲劇の王女ヒルダの制止にも耳を貸さず、
彼らは決着をつけるべく旧パラメキア… パンデモニウムに赴くのだった。

地獄の城へ通ずる道、ジェイド。ミシディアの果てにある地名でもある。
そこに、まさしく地獄への道が口を開けていた。最強と賞されるモンスター、
ドラゴンが幾度となく襲いかかり、彼らを苦しめる。永遠とも思われる長い道のりを越えたとき、
そこはパンデモニウムだった。彼らほどの戦士となると、直感的にわかるらしい。躊躇なく叫んだのだ。
「やった、パンデモニウムにはいったぞ」と。

見たことのある敵、ない敵、色違いの敵と死闘を重ね、
戦って戦って、戦い抜いたとき。
そこに皇帝を守る地獄の四天王の姿があった。

アスタロート。
ティアマット。
ベルゼバブ。
そしてゾンビボーゲン。

いずれも負けず劣らぬ著名でその上で強力な魔物である。
しかし、幾多の死闘をくぐり抜け、たくましく成長した4戦士の知力(ちりょく:あ9)
の前に全て蛙と化したのだった。

もはや彼らの進撃を阻める者はない。諸悪の権化、
パラメキア皇帝を打ち破り、この長すぎる戦いに終止符を打つ。
 パンデモニウム城、最深部。星空のようなこの世と思えぬ空間に、皇帝はいた。



人々は知らない。レオンハルトがパラメキア新皇帝についた時、城内で何が起こったかを。
りゅうきし リチャードの壮絶な死に様を。
バフマスの街を恐怖のどん底に陥(おとしい)れたダークナイトの正体を。
竜巻内でパラメキア皇帝を打ち負かした4戦士達が、
全ての決着をつけるためにパンデモニウムに向かったことを。

ヒルダ。 ゴードン。 レイラ。 ネリー。

世界を災いより救った勇者の出迎えには寂しすぎたかも知れない。
真実を知る者はあまりに少なかった。フリオニールの口から、
いつものように簡潔に報告が述べられた。そこに、勝利に酔いしれる者の姿はなかった。
彼らは知っていた。自分たちの勝利が多くの仲間達の犠牲の上にあることを。

ヒルダ、ゴードンは世界の復興に力を注ぐ。レイラは海賊稼業に戻った。
ネリーはこの王城でできることを探すという。

みなが己の道を歩まんと去り、4人だけになった。
昔と変わらぬ、平和な暮らしをマリアが口にし、みなに同意を求めた時。
レオンハルトが切り出した。

レオンハルト「おれたちは いろんなことをしりすぎた‥
もう むかしには かえれない‥‥

「もう むかしには かえれない‥‥」レオンハルトの最後の一言がフリオニールの胸に刺さる。

マリア「にいさん‥なぜ? まって!!
フリオニール にいさんをとめて!!

マリアがせがむ。が、フリオニールにレオンハルトをとめることはできなかった。

フリオニール「おれにはとめられない‥‥
レオンハルト のいったとおりだ‥‥

去り行く友に、フリオニールは叫んだ。

フリオニール「レオンハルト いつのひか きっと!!


ミンウ、ヨーゼフ、シド
そして、リチャード。
ふと、彼らの姿が見えた気がした。
彼らが命を投げ出して救った世界がここにある。振り向き、声を高くフリオニールは言った。
「これからが ほんとうの はじまりだ」



パンデモニウムは消滅し、この世から魔物が消え去った。
あの光の柱がパンデモニウムと皇帝の消滅を意味するものだと人々が知るのは、もう少し後のことになる。

世界を救った4人の戦士の名前と彼らの活躍は、
彼ら4人が姿を消したのち、伝説として語られるようになった。



1997.9.19.

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